パリ旅行記 一

 十一月下旬、一週間ほどでモン・サン・ミシェル、シャルトル、ランス、ヴェルサイユ宮殿、そしてパリで二日過ごすツアーに参加して、フランスを訪れた。フランスについて、またそもヨーロッパについては、書物を通じて知るばかりで、実際に自分の目で見るのは、これが初めてのことである。見てきたこと、感じたことを書き記しておこうと思う。

 

 まずヴェルサイユ宮殿でのことから。早朝の開門前に到着したので、屋根をはじめとする各所の金の飾りは、朝の光に照らされて輝いていた。宮殿の中に入り、主だった部屋の絵画、装飾などをガイドが解説してくれるのを聞きながら歩いて行く。昔から一度はこの目で見たいと思っていた鏡の間も、早い時間のおかげで人の少ない中、落ち着いて余裕を持って見て回ることができた。

 

 ガイドの説明では、彼の時代にフランスが大国となった影響力に、宮殿が重要な役割を果たしたと言われていた。またルイ14世推しと感じるぐらい、各種の芸術を始めとして、美的方向性が彼によって与えられ、定められたと賞賛していた。聞き通しての感想は、フランスといえば兎角ヴェルサイユ宮殿が言及されるのだが、それも当然のことであったのだという納得が得られた、というところだろうか。

 

 宮殿からバスで移動して、モン・サン・ミシェルに、日の暮れる頃に到着した。暮れる中遠くに浮かぶモン・サン・ミシェルを眺めて、翌朝から参拝した。これも朝一番の入場であったので、参道は人少なく、建物内部でもほとんど人影を見ずに、静かな部屋、薄暗い廊下、無人の広間を通り抜けて、じっくりと見て通ったつもりで建物の外に出た。

 

 まだ時間がたっぷりとあったので、城壁を辿り、ガブリエル塔、そのすぐ外の海の見えるところまで行った。それから橋を渡り対岸地区に戻り、そこから遠景にモン・サン・ミシェルを見て過ごした。ツアー旅程のスケジュールに時間の余裕が大きかったので、本当に存分に見て過ごすことができた。

 

 そこからシャルトルへ移動した。ここへは暗くなる頃に街に着いた。食後、プロジェクションが施された大聖堂を見に行く。途中、窓の音がするので見上げると、老婦人と目が合うや、美しく優しい声で Bon soir と挨拶された。感心する一瞬の間があいたが、こちらも同じ挨拶を返して、大聖堂へと足を進めた。

 

 翌朝、ウール川沿いを散策する。高台に立つ大聖堂は、建物の隙間あれば常に姿を見せてきた。その後、大聖堂を参拝する。続いてランスへ行くのだが、シャルトルの街とランスとを比較すると、シャルトルは古くからの街並みや建物が多く残っていたが、ランスは現代的建築が多く見られる都市の趣が強い場所と言える。ランスは、大きめの都会なら世界のどこでも見られる様子の地で、その中に大聖堂が一つ立っているという感じであった。

 

 それからパリに夜になってバスで入った。高速道路での渋滞や大きな通りでの繰り返される停車発進を経て、モントルイユにあるホテルに到着した。付近は各地からの移住者が多く住む街区のようで、飲食店も他国風のものばかりが目についた。ロータリー側でのガイドブックに蚤の市とあるものも、安い衣料雑貨をそういう人たち向けに売るのが中心であった。

 

 翌朝からパリをシテ島、サンルイ島を中心にした範囲で散策した。まだ暗い中を地下鉄で近くまで行き、朝日が建物を照らしだす頃に、散策を開始する。早出の旅行者をちらほら見かけると、やがてジョギングする人たちが増え、気づくと多くの観光客の中を一緒に歩くという感じで、昼過ぎまで気の向くままに、通りを曲がり、店を覗き、そして本屋に入って並んでいるものを物色して、午後遅くまで過ごした。

 

 疲れたらホテルへ帰るのを二日続けて行い、ツアーのスケジュールで深夜に空港へと移動して、日本に帰国した。続く